はじめての製氷機選び|飲食店開業

飲食店にとって、氷は欠かせません。ドリンクやお酒に使うだけでなく、食材の保冷や料理を提供するときの演出などにも使われます。氷にこだわりがあったり、少量しか使用しない場合には氷屋などの専門業者から購入するケースもありますが、ほとんどの飲食店では、厨房に製氷機を置いています。

しかしひとくちに製氷機と言っても、その種類はさまざまで、最初はどのように選べばいいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。初めての開業で失敗しないために、基本的な製氷機の知識と選び方のポイントをご案内します。

作れる氷の種類で選ぶ

商品によって、作れる氷の種類も違います。自分のお店に必要な氷の種類は何かを知ることは、製氷機選びの第一歩でもあります。

飲食店で使われる氷は、大きく8種類のタイプに分けられます。それぞれの特徴や、主な用途を見てみましょう。

キューブアイス

【特徴】飲食店で使われる最もポピュラーな氷です。名前の通りキューブ型(立方体型)の氷、一辺は3cm前後です。さまざまな用途で使用できるので、使い勝手のいいタイプと言えます。透明度が高くて硬く、溶けにくいのが特徴です。「氷は○個入れること」と、オペレーションマニュアルが作りやすいというメリットもあります。

【用途】主にドリンクに使用します。溶けにくいため、味を薄めてしまうことなく冷やせます。他にも、かき氷用の氷として使ったり、食材を冷やしたりと、幅広いシーンで利用可能です。

ハーフキューブアイス

【特徴】一辺が1.4~2cm前後のキューブ型の氷です。キューブアイスの半分くらいの大きさなので、ハーフキューブアイスと呼ばれます。キューブアイスと同様、透明度が高くて硬く、溶けにくいことです。

【用途​】キューブアイスとほぼ同じで、ドリンクに使用したり、食材を冷やしたりと、幅広く使われます。一つの氷のサイズが小さいので、小さなお子さまや女性のお客さまが多いファミリーレストランのようなお店に向いています。また、袋につめやすいので、火傷をした際などのアイシングにも適しています。

フレークアイス

【特徴】ガラスの破片のような見た目の、不定形の氷です。厚さが2mmほどと薄く、小さいのが特徴。ほかの氷よりも、低コストでたくさんの量を製氷できるメリットがあります。

【用途​】鮮魚やお肉など食材の鮮度保持・冷却用として、アイスベッドなどに多く使われます。粒が薄くて小さいため細かい隙間に入りやすく、食材を傷つけることなく素早く冷却できます。

チップアイス

【特徴】フレークアイスを固めてつくった氷のこと。紙コップなどに入れた際の“シャラシャラ”とした音は、清涼感があって人気です。表面積が大きいため、ほかの氷よりも溶けやすいという難点がありますが、冷却には適しています。

【用途】飲料用としてドリンクに使用したり、食材などの冷却用に使われます。料理の演出を兼ねたアイスベッドとしてもよく使われます。板状、キューブ上のアイスよりも表面積が大きく、素早く冷やせるので、海鮮食材などを扱うお店におすすめです。

異形アイス

【特徴】ハートや三日月、星など、ユニークな形をした氷の総称です。見た目から楽しむことができ、料理やドリンクの見栄えが良くなります。

【用途​】バーや喫茶店、居酒屋などでドリンクに入れて提供するのがおすすめです。異形アイスを使えば、普通のドリンクがフォトジェニックに変身。流行りのSNS映えも狙えます。子どものジュースに入れれば、喜ばれることは間違いありません。また、冷たいデザートなどに添えて、保冷と演出をかねた使い方もできます。

丸氷(まるごおり)

【特徴】バーや居酒屋などお酒を扱うお店で使われている球体の氷です。表面がツルツルしたものとデコボコしたものがあり、ツルツルであるほど溶けにくくなります。

【用途​】お酒用として、ロックグラスなどに入れて提供することがほとんどです。溶けにくい上に表面積が大きいため、ドリンクを薄めることなくしっかりと冷やせます。

ブロックアイス

【特徴】名前の通り、ブロック型の氷です。氷屋で売っている氷は基本的にこのタイプです。カット次第でさまざまな用途に利用でき、とても便利で使い勝手が良いです。大きなサイズは、通常の業務用製氷機では製氷できません。

【用途​】砕いたり加工をすれば、かき氷用の氷やかちわり氷、丸氷など、さまざまな用途に活用できます。イベントなど野外でドリンクを冷却する際に使われる、いわゆる「どぶ付け」にもよく使われます。

純氷(じゅんぴょう)

【特徴】製氷機ではなく氷屋がつくった氷で、カルキなどの不純物を含んでいません。水をろ過した後、じっくりと時間をかけて凍らせているため、透明度が高く、とても硬いのが特徴です。手間をかけている分、質も良く、高級なお店で多く使われるます。

【用途​】料理やドリンクなどに使うだけでなく、鮮魚などの冷却用としても使います。不純物を含まないため氷自体に味が全くなく、食材の味を損なうことなく提供できます。

製氷機のタイプで選ぶ

製氷機の種類は、大きく分けて4つのタイプに分類されます。

アンダーカウンタータイプ

コールドテーブルや作業台などと天板の高さを揃えることができるタイプ。天板部分を作業スペースとして使用することが可能です。スペースを有効活用できるので、狭い厨房に向いています。

スタックオンタイプ

氷の用途や使用量に応じて、自由に製氷ユニットと貯氷庫を組み合わせることができます。製氷量・貯氷量を変更したい場合も、新しいものを丸ごと買い替える必要がなく、ユニットを買い替えることで自由にカスタマイズが可能です。サイズが大きく、一度にたくさんの氷を作れるので、ホテルや大規模レストランなどでよく使われます。

バーチカルタイプ

縦長の製氷機で、扉の位置が高いので、腰をかがめることなくラクに氷の取り出しができるタイプです。小規模飲食店から中型店まで、幅広く対応しています。

スライド扉タイプ

扉を開閉する際に、扉を引き出すためのスペースのいらない、スライド扉を付けた製氷機。省スペースを実現するので、狭い厨房や人が多く行きかう場所に設置する場合におすすめです。

製氷能力で選ぶ

製氷機には、1日に何kgの氷を作ることができるのかを示す「製氷能力」という指標があります。24kgタイプ、45kgタイプと言った表記が説明書にあるのですが、これがその製氷機で1日に作れる氷の量です。製氷能力のバリエーションは多く、12kg~500kg、更に多い場合は、1040kgの氷を作ることができるものまであります。
飲食店では、一日の営業でどのくらいの量の氷が必要になるのでしょうか。当然、お店の大きさによって、それは変わります。一般的には、(席数×1.5)kgが必要になると言われます。仮に20席のお店ならば、20席×1.5=30kg。つまり、20席のお店なら、最低でも製氷能力30kgの製氷機を購入すればいいということになります。
もちろん、それはあくまでも目安であって、業態や繁盛度合にもよって氷の必要量は異なります。居酒屋や喫茶店など、冷たいドリンクやお酒を多く提供するお店は、目安よりも多めの製氷能力を求める方がいいかもしれません。「氷が足りなくてお酒が提供できない!」なんてトラブルが起こっては大変ですから。

逆に、ラーメン店などで、お酒の提供をせず、お冷の提供以外で氷を使わないような場合は、目安よりも少なめの製氷能力でも問題ないでしょう。

席数別のおすすめ機種の例

16席程度

製氷能力25kgの製氷機がおすすめ
タイプ:アンダーカウンター

23席程度

製氷能力35kgの製氷機がおすすめ
タイプ:アンダーカウンター

30~35席程度

製氷能力45~55kgの製氷機がおすすめ
タイプ:アンダーカウンター

43~50席程度

製氷能力65~75kgの製氷機がおすすめ
タイプ:バーチカル