HACCP(ハサップ)衛生管理の実施が義務化

食品衛生法の改正によって、2020年6月1日より飲食店を含むすべての食品等事業者にHACCP(ハサップ)衛生管理の実施が義務化されました。

「HACCP」とは「Hazard(危害)、Analysis(分析)、Critical(重要)、Control(管理)、Point(点)」の略。HACCPの考え方に基づいた、しっかりとした衛生管理を飲食店でも行うことが必要になったということです。

飲食店は何をすればいいのでしょうか。

そもそもHACCPとは何?

HACCPとは、危険なポイントを予測し、食中毒を未然に防ぐためのシステム事業者は自ら衛生管理計画を作成し、その計画に沿って衛生管理を実行し、記録することが求められます。

今までは、最終製品の抜き取り検査による製品検査のみだったので、一定率の見逃しが存在していました。しかも、その検査で不適合がひとつでも見つかったら、一連のすべての製品の廃棄が必要となります。

HACCPでは、原材料の受入れから最終製品までの全工程を対象として、あらじめ危害を予測し、危害防止に繋がる重要な工程を監視・記録します。最終製品に行く前に問題が発見できれば回収等が可能です。つまり、すべての製品を廃棄するのではなく、問題のある製品の出荷だけを未然に防げることが、大きなメリットです。

原材料の受入れから最終製品までの各工程ごとに、微生物による汚染、金属の混入などの危害要因を分析した上で、防止に繋がる重要管理点を加熱温度や時間などで継続的に監視・記録します。もし、問題があれば、出荷する前にその製品の出荷を防止をすることが可能になったという事です。

【工程設定の例】原材料→入荷→保管→加熱→冷却→包装→出荷→製品

飲食業界での衛生管理対策について

飲食業界では「製造環境の設備や衛生の確保」などの意識が低いと、食中毒や異物混入などの事故が原因で、店の信用・信頼を失う事があります。食品の事故は命にかかわることもあるため、食を提供する者は衛生管理を深く理解、実践する必要があります。

手洗いの大切さを理解しよう!

人の手は菌が最も繁殖しやすい場所です。現場に適した手洗いのルールづくりは重要です。

【サポートアイテム】・手洗いせっけん液・手指消毒液・爪ブラシ

【手洗いのタイミング】・トイレ、休憩後・調理時入室時・手袋着用前・盛り付け作業前

調理道具を正しく使おう!

菌が付着した庖丁やまな板などの調理道具を使うことで、食材に二次汚染し、食中毒が発生することがあります。調理道具を使用用途および食材別に色分けし、交差汚染を防止することも重要です。

色分け包丁・カラートング・抗菌まな板など、さまざまな調理道具を上手に使うことをおすすめします。

調理道具の洗浄も、ブラシやたわしを使い分けるルールを作成しましょう。

※スポンジタワシ、ネットタワシは消耗品です。タワシがほつれたり、破けたりしたら異物混入の原因になります。使用頻度にもよりますが、スポンジタワシは約2週間、ネットタワシは約1ヶ月を目処に交換する事をおすすめします。

温度計を活用しよう!

温度計を効果的に活用しましょう。温度計は、菌の有無の目安をはかる大切なバロメーターです。適切に使用することで見えない菌から食品をガードします。食中毒の原因となる菌が死滅する温度帯に達していることを確認することで、菌が増殖・繁殖しやすい温度帯を回避することができるため、食中毒予防に効果があります。

用途にあわせた温度計もあります。たとえば中心温度計。食材の加熱時等に、主に内部の温度を計測するのに使用されます。一番厚みがある場所など、最も熱が伝わりにくい場所を計測しましょう。ハンバーグ等の挽肉や加工肉はリスクが高いので、中心温度を確実に計測する必要があります。煮物/炒め物は、最も熱の伝わりにくい食材を計測します。

食品の中心部が75°C以上で1分間以上の加熱を確実に実施してください。

※ノロウイルスの場合は85°C~90°Cで90秒以上の加熱が必要です。

異物混入からお客様を守ろう

異物とは、本来その料理に入ってはいけないものです。厨房の整理整頓や調理道具のチェックをしましょう。バネ無万能トング(異物混入対策用)、パンチングザル(網が切れての混入防止)、レードル(ビスなしスポット溶接)、カラーたわし(色付きなので混入時はっきりわかる)、金属探知機などの活用をおすすめします。

お客様が直接触れる場所をチェックしよう

お客様が直接触れる場所、たとえばビュッフェ・デリカにも危険が潜んでいます。

注意したい衛生管理は下記項目です。

●提供時間や料理の温度を適切に管理しましょう。

●二次汚染や交差汚染が生じないように配慮しましょう。

●お客様が直接触れないように器や用具の配置を考慮しましょう。

●残り少なくなった料理の同じ皿への継ぎ足しをしないようにしましょう。

●常に清潔を保ち菌の増殖しやすい環境にならないようにしましょう。

食中毒菌やウイルスが食品に付着しても、腐敗とは異なり「味」「色」「臭い」が変わることがないので、注意が必要です。