業務用フライパンは家庭用と何が違うのか?

数ある厨房器具の中で、業務用と家庭用の差がわかりづらいものの一つがフライパン。最近は家庭用にも高級な道具がありますから、確かに業務用と遜色ない道具もあるようですが、それでも、やっぱり違いはあるんです。今回は、そんなフライパンの話。調理道具のスペシャリスト、燕市の江部松商事さんに話を伺いました。

まずはフライパン選びの基礎知識

業態にもよりますが、料理人の多くは数種類のフライパンを使い分けている人が多いのではないでしょうか? 焼くものと炒めるもので使い分けるのは一般的ですし、パスタ専用、ソース作り専用といったフライパンを持つ人もよく見ます。

まずは、素材の違いでどんな特徴があるのか、基本の知識をおさらいしてみましょう。

アルミ製のフライパン

メリット

熱伝導率が高いので、素材を活かして短時間で全体的に火を通す調理に向いています。野菜を茹でる、パスタをソースに絡める、煮びたしや煮魚などにおすすめです。

デメリット

酸やアルカリに弱いので、長時間煮汁を入れっぱなしにしたり、洗う時にお酢や重曹を使うのには向いていません。

鉄製のフライパン

メリット

油なじみがよく、丈夫なので、強火での調理に向いています。強火での調理や焦げ目を付けたい料理におすすめ。炒め物もシャッキリとした仕上がりになります。

デメリット

日頃のお手入れが大変。常に油を馴染ませておかないと、焦げ付きやすくなったり、サビてしまうので、洗って水気を取ったら油を馴染ませます。煮汁を長時間入れっぱなしにすると、サビてしまうので、煮込み時間の長い料理には向いていません。しっかりお手入れをすれば長く使用できます。

業務用と家庭用の意外な違い

フッ素加工が施されているフライパンは、実はアルミ製や鉄製のものより業務用と家庭用に大きな違いがあります。家庭用の一般的なフッ素樹脂コーティングフライパンは、値段によっても違いますが、本体の材料にアルミ素材を使っています。業務用はステンレス素材、アルミダイキャストなど高価な素材を使っている事が多いです。

家庭用(低価格)は表面処理、フッ素樹脂コーティングを施す回数が2回~3回と少なく、素材への食い付き力が弱い。値段が安いほど、塗りの回数が少なくなるので、寿命が短くなります。

業務用の表面処理は焼付塗布を施しており、塗りの回数も多いので、長持ちします。

ただし、空焚きや急激な温度変化は厳禁。表面のコーティングが剥離する原因になります。

フッ素加工製品は使い捨て?

フッ素加工が施されているフライパンは、フッ素加工を再度かけ直すことで、修理できます。ただし、柄が木製、樹脂製のもの、ヘコミが酷いフライパンはかけ直しができません。一度、窯に入れ、約400℃という高温で表面に付着している汚れを落とすので、木製、樹脂製は耐えられません。

ですから業務用フライパンは、フッ素加工が剥がれたり、食材の剥離性が悪くなっても、廃棄するのではなく修理をオススメします。江部松商事さんでは、フライパンの再フッ素加工修理を年間約1,000枚ほど行っているそうです。最近話題のSDGSの観点から、私たちテンポスも修理して長く使うことをオススメします。買い替えるよりも経済的で環境にもやさしい選択です。

取材協力:江部松商事株式会社