初心者のための、失敗しないメニューブックの選び方

飲食店開業時に揃えたものの中で、後々後悔することが多いのが実はメニューブック。それはなぜなのか、失敗しないためにはどんなところに注意すればいいのか、メニューブック制作に45年以上もの歴史を持つ有限会社シンビさんに、お話を伺いました。

初心者が陥りがちなミスとは?

メニューブックを選定するとき、最も一般的なのはお店の雰囲気に合わせるという考え方。これ、間違っているわけではないのですが、これだけを考えていると、後々後悔することも。

同業種の他店舗で使用されているものを参考にするのはとてもいいことなのですが、その時に見ているのが外見だけで、色やデザインしかチェックしていないという人、とても多いです。

相談にいらっしゃるお客様も、「うちは中華だから」「お店のインテリアに合わせて自然を感じるナチュラルなイメージがいい」「東京で沖縄料理の店を出すので沖縄のイメージのメニューがいい」などと雰囲気重視で探す人がほとんどです。

実際、メニューブックはお店の雰囲気やイメージを、お客様に伝えるツールとして有効です。高級店でチープなメニューブックを使っていては、それだけでお店の雰囲気は台無しですから。

問題は、デザインなどの雰囲気以外のところにあります。オープン後、メニューブックの交換を検討する際や、次の出店時に、最初に買った製品と違うものを選ばれる方は、なんと6割ほどいらっしゃいます。その理由は、最初は雰囲気や素材感にこだわり、汚れにくさや、耐久性、仕様などをまったく検討していなかったからです。リピートの際には、耐久性を第一に考えるようになるのです。

メニューブックは、色やデザインと同時に、素材や機能なども合わせて考えて選ぶことが大切です。

メニューブックを使い方をチェックする

耐久性や機能性を検討するときには、メニューブックがどんな使われ方をするのか、どんな場所に置くのかなどをまず確認してください。業態や運営方法などで、かなり条件が変わります。

例えば焼肉屋であれば、まず耐熱性に優れたものである方がいいでしょう。しかし、実はそれ以上に耐油性や耐傷性が重要です。実際に焼肉店を運営されている方に聞くと、焼肉時の油はねや、落としたりこぼしたりということもあって、メニューブックには想像以上に油分が付くそうです。しかも油分は目に見えづらいので、清掃がきちんと行き届かない場合もあります。ベタベタした状態のメニューを手に取って不愉快な思いをしたこと、一度はあるのではないでしょうか。

また、メニューブックの上にトングやお肉を切るハサミを置いて、傷がつくこともよくあるそうです。テーブルに常時おいておくのか、ご注文を頂いた後、一度メニューブックを下げるのかなど、運用方法でも変わりますが、メニューブックがどんな状態で使われるのか、を実際のオペレーションを想定して考えることが大切です。そういう意味では同業種の先輩や、シンビさんのような実績と経験豊富な業者、私たちテンポスのスタッフのように飲食店の情報やノウハウを持っている者に相談してみることも効果的だと思います。

耐久性はどの程度で想定するべきなのか?

シンビさんに聞くと、開発時点で想定しているのは1年。ですから保証をつける場合は1年を有効期間とすることが多いそうです。実は壊れやすいのは表紙ではなく、背表紙部分です。

メニューブックを開く度に、表紙と背表紙の接続部は消耗します。やがて亀裂が入って破れてしまいます。耐久性に優れたメニューブックは、この部分がしっかりしています。お店の回転率や、店舗内の環境(温度や湿度)によりメニューブックの耐久期間は変わりますが、少しでも長持ちするに越したことはありません。メニューブックの性能、機能をしっかり確かめて選ぶことは大切です。シンビさんでは2023年度から製品にピクトサインを表示し、機能をわかりやすくしているそうです。

その他の注意点

メニューブックには、ページ数が固定されているものと変動可能なものがあります。メニュー変更がどれくらいの頻度であるのかによって、選ぶべきものは変わってきます。

春夏秋冬、季節ごとにメニューが変わるお店の場合は、差し替えが簡単な製品を選ぶべきです。メニューの差し替えは、意外と労力、時間を消費します。

OPEN当初はメニュー数がそれほど多くなくても、追加でメニューが増えていき当初の想定メニュー数、ページ数から大きく変更になる場合も多々聞かれます。その場合メニューブックを買い替えると、想定外の出費が発生してしまいますので、メニューが増える可能性があるのであればページ数の増減可能なスタイルのものを選んでおくべきでしょう。

また、お客様がメニューブックをどのような状況で見るのかも、重要なポイントです。持ちながら見ることを想定しますと軽量な素材がいいでしょうし、また、ご年配のお客様が多い場合は、文字を大きくするためにも、平均より大きいメニューブックを用意した方がいいかもしれません。とにかく、お客様目線で考えること、これが大切です。

まとめ 

お店のオーナー様、スタッフ様の思いに加え、耐久性、機能性、ページ数、大きさ、そして将来予測まで、あらゆる要素を、お客様目線で考え、様々な角度から選ぶことが大切です。

メニューブックは入店してお客様が一番最初に手に取るものです。メニューブックがお店の第一印象を決めると言っても過言ではありません。ボロボロなメニューブックでは、それだけで印象を悪くしてしまいます。メニューを紹介するだけがメニューブックの役割ではないのです。お店の顔であり、販促ツールであり、お店の宣伝マンでもあります。デジタル化が進む世の中ですが、アナログのメニューブックが無くなることは、これからも絶対にないと思います。

取材協力:有限会社シンビ