コロナ禍の飲食店は、付加価値が大切
高校卒業後、箱根のホテルに就職し、レストランとバーで働いた。その後、某大手ファミリーレストランに転職し、ずっと飲食に関わってきた。12年前、36歳の時に結婚して、それからかな、いつかは独立しようと考えるようになった。
2021年、48歳で、埼玉県川口市に「スペアリブOKUNOYA(おくのや)」をオープンした。川口市では相当珍しい、ペット可の飲食店だ。
ペットと楽しめる飲食店にしようと思ったのは、コロナ禍で外食需要が減っている時代に、普通の飲食店を出してもダメだと思ったから。いくら美味しい料理を出しても、それだけで集客につながるかというと難しい。よほど立地が良くないと。しかし、ペットと一緒に食事を楽しめる店はそれだけで大きな付加価値になると考えた。
自分でも大型犬を飼っているのだが、地元の川口市には、ペットOKと言う店は少なく、いつも困っていた。自分のように困っている犬好きは多いのでないかと思い、そういう店を作れば、遠くからでもわざわざ来てくれるだろうと考え、コンセプトは決まった。
え!? オープンに総額1,000万円!
物件探しは、思った以上に大変だった。ペットを室内に入れるのは、大家さんにとってはリスクになる。大家さんがダメと言ったらダメ。よほど動物に理解がある大家さんじゃないと、なかなかOKは出ない。
1年かけて見つけた物件は、老夫婦が経営していた飲食店の居抜き。3年空いていた物件だった。2フロアで合計24坪。家賃は11万円。大家さんにご理解いただき、物件を契約することができた。
造作譲渡代は0円。ありがたいことに保証金は1カ月、礼金はペットも入れるということで1カ月上乗せの2ヵ月の条件だった。そのため、不動産取得費は総額約60万円と、格安で済ますことができた。
ただ、居抜き物件だが、厨房設備は残っていなかった。給湯器も壊れていて使えない。まずは、この状態から、営業できるように整えるのに、いくらかかるか見積りをとると坪50万かかると言われた。店は24坪なので、総額1千万かかる見積もりだ。そんな時、たまたまテンポスに厨房の相談に行くと、テンポスがDIY支援を始めたと聞いた。
「ドア1枚作るだけでも5万円、カウンター作るのに10万円~と言われても、なかなかピンとこなくて。そんな時に、テンポスからDIY支援の話を聞き、それなら自分でやってみようと思いました。」
そう、奥野さんは内装工事を業者に頼むのではなく、自分でDIYで店作りをしようと決めたのだ。とはいえ、オープンまでそれほど余裕があるわけではない。限られた時間の中での、奥野さんのDIYへのチャレンジが始まった。
DIYで大変な事?全部だね。
いよいよDIYがスタート。奥野さんのリアルな感想はというと。
「日曜大工をかじっているくらいじゃ、店舗DIYって無理だなって痛感しました。切ったり、張ったりするくらいはできるかなと思ったけど、そんなことはない。造作で残っていたカウンターの板をはがして、新しい板を張るのも一苦労。寸法を測る一つとっても、一筋縄ではいかないんです。私ができたのは、磨いたり、拭いたり、はいだりすることだけ。造作で残っていたテーブルをリメイクするのは、失敗してもいいからという気持ちでやってみました。やすりで削って、店の雰囲気に合わせて色を塗って。これは上手くいったかな。妻も手伝ってくれて、大切に使っていこうと思いましたね。」
内装工事費はエアコンや電気工事も含めて190万円と格安に
奥野さんご自身でDIYしたのは、出入り口のタイル貼りと扉の塗装、カウンターの造作の直し、手洗い器の設置等だ。その他の、エアコン設置やクロス貼り、トイレを和式から洋式への変更、給湯器設置などは専門の内装業者にお願いした。結果、内装工事はもろもろ190万円で抑えることができた。坪当たり約8万円である。
「たまたま、エアコンを安く売ってくれる業者さんに連絡したら、店舗の内装もやるよ、電気工事もできるよということでした。しかも、これが安くて。中国の職人さんの会社でした。しかし、安いのが心配で、テンポスさんに見積もりが適正かどうか相談したところ、相場よりも安いと教えて頂いたので、お願いすることにしました。半導体の影響で給湯器が不足していましたが、それもスムーズに用意してくれました。良い会社さんでしたね。」
開業資金の内訳
内装工事費や不動産費以外の、開業資金の内訳を教えて頂きました。
家賃 | 11万円 |
坪数 | 24坪 |
不動産取得費 | 60万円 |
内装工事費 | 190万円 |
厨房機器 | 160万円 |
椅子・テーブル | 10万円 |
食器・調理道具 | 20万円 |
POSレジ | ー |
広告宣伝費 | 食べログ |
その他 | ー |
合計(上記以外も含む) | 450万円 |
厨房機器は、総額約160万円。中古で買ったのは、製氷機と縦型2ドア冷蔵庫。「OKUNOYA」はスペアリブが看板メニューのため、オーブンは必須。本当は、フライヤーなども購入したかったが、運転資金にまわすことを優先し、最低限の機器からスタートすることにした。
テーブルの椅子はネットやテンポスを使って揃えることに。テーブルは奥野さん自身がリメイクしたものだ。
食器調理道具類は約20万円。お皿は、自分の店に合うものがテンポスに無かったため、合羽橋で購入。調理器具はテンポスで購入。
テンポスを利用しての感想
最後に、テンポスを利用しての感想を伺うと、
―奥野さん
テンポスさんには、感謝しています。レスポンスも早くて、お願いしたことは必ずやってくれていました。そこまでやってくれるのかということもありました。例えば、ある厨房機器の搬入を、急いでとお願いしたら、夜の21時からやってくれて。
明日でもいいのにと思ったけど、コストをかけたくないことを宣言していたので、空いている時間や、何かのついでなどに、チョコチョコやることでコストを下げてくれていました。
だから、テンポスの上層部の方、川口にあるテンポスのお店をもっと新しくしてあげて欲しい。テンポスって冬は寒いし、夏は暑い。柳澤さん頑張ってくれているから、環境良くしてくれたらな、と思います。
取材協力
奥野静さん
店名:スペアリブ OKUNOYA(おくのや)
住所:埼玉県川口市朝日5-13-14 1F
TEL:048-299-8842