よくわかる業務用「スチコン」の選び方 | 飲食店開業の基礎知識

「スチコン」とは「スチームコンベクションオーブン」の略称。1台で「焼く」「蒸す」「煮る」「炒める」「炊く」「揚げる」などのさまざまな調理ができる、万能調理機器です。一昔前は、ホテルや結婚式場などで使われる大量調理用の厨房機器という認識でしたが、最近は、誰でもカンタンに調理できることや、調理時間を削減できることなど、そのメリットの多さから、小さい店でも使われるようになってきました。サイズも小型、中型と幅が広がっています。

ますます注目が集まるスチコンについて、導入の利点、注意点、選び方などをわかりやすくまとめました。

スチコンとは?

コンベクションオーブン(熱した空気をファンで循環させて加熱調理するオーブン)に、蒸気発生装置を加え、熱と蒸気をコントロールすることによって1台で複数の調理法を可能にした多機能の加熱調理機器。スチーム機能で蒸し料理、コンベクションオーブンの熱で焼き料理、両方を組み合わせることで煮る、茹でる、炒める、炊く、揚げる料理もできるのです。

スチコン導入のメリット

大量調理ができる

ハンバーグを20個、焼き魚を15個、というように一度に大量調理することが可能です。野菜を蒸す下準備もラクラク、煮物も直火にあてるわけではないため、焦げる心配もありません。数人でしていた作業をスチコン1台でできるということになるので、生産性が劇的に向上し、人手不足の解消や人件費の削減にも繋がります。

時間の節約、業務の効率化

複数の料理を同時に調理できることも作業効率を向上します。例えば肉料理を焼いている下の段で魚を焼くことが可能です。機種によっては調理法の違う料理を同時に行うこともできます。スチコンが自動調理している間、別の料理を作ったり、別の作業をすることもできますね。夜の間にタイマー調理を行うこともでき、割安な夜間電力の利用して経済効果もあり◎ 時間も手間も節約できます。

誰でもシェフの味を再現できる

ボタン操作をするだけで温度や時間を正確にコントロールできるので、誰がやっても均一な仕上がりが可能です。温度のコントロールもボタン一つなので、野菜は煮崩れしないし、火を付けたり消したりする必要もないので、コンロの前から離れることもできます。経験のないアルバイトでも、火加減の難しいローストビーフのような料理もシェフのレシピを再現できるのです。

メニューの幅が広がる

さまざまな調理法が可能なスチコンなら、プロの料理人の作業をアルバイトでも失敗することなく再現できます。各メーカーが、一流シェフの考えたスチコンレシピなども公開しているので、メニューの幅を広げるのもカンタンです。

スチコンの種類と選び方

型式で選ぶ

電気式とガス式の2種があります。一般的に、ガスの方が火力が強く立ち上がりが早い、電気の方が熱回りが均一でムラができにくいなどと言われますが、それほど大きな性能の違いはありません。ガスの方が若干、高いかな、というほどです。

性能より、導入を考えている店舗の環境で決めた方がいいかもしれません。基本的に電気式の場合は200V電源が必要です。ガス式はメインはガス設備ですが、コンピューター制御する電気もいるため100V電源が必要です。200Vコンセントがない場合は、電気工事が必要になり、それだけでプラス何十万とかかってしまうことがあります。形式を選ぶ前に、電気設備を確認しておくことが肝心です。

また、ガス式は火力が強い分、機器周りの温度も高くなりやすく、消防法的にフードの設置が必須になります。ただし、電気式でも、開けた時に出る蒸気の温度は非常に高く、換気が悪いと天井にカビが生えてしまうので、やはりフードをつけることをお勧めします。

サイズで選ぶ

小型、中型、大型、さまざまな大きさのスチコンが、各社から出ています。設置するスペースを想定して上手に選ぶことが重要です。スチコンの導入によって必要なくなる厨房機器もあるので、狭い厨房の店舗でも工夫次第で、より広いスペースを確保できる場合もあります。

もう一つ重要になるのは、使えるホテルパンのサイズの確認。小型機器の場合は、大きなホテルパンは使えないものもあります。大抵スチコンのサイズは、幅と奥行きをホテルパンのサイズで、高さを何段重ねられるかという段数で表記されているので、それを確認しましょう。鍋やフライパンを入れたい場合もあるかもしれません。つまりどんな使い方をしたいのかを想定しておくことも大切になります。

小規模の飲食店さんにおすすめしているのは、テンポスグループのキッチンテクノが販売している、ホテルパンが5枚入るタイプです。3枚タイプと5枚タイプを販売していますが、値段も大きさもそれほど変わらないので、5枚タイプをおすすめしています。お客様からも人気の機種です。

グレードで選ぶ

大抵のメーカーは、下位シリーズから上位シリーズまで、いくつかのグレードに分けて製品を用意しています。上位になればなるほどさまざまな使い方ができ、便利になるわけですが、当然価格は高くなりますから、どこまでの性能が必要なのか、スチコンを活用したい料理の種類や使い方を想定して選ぶことが肝心です。

例えばローストビーフに使いたい場合は、芯温センサーがついているととても便利です。ブームにもなっている低温調理もカンタンにできます。それぞれのグレードで何ができ、何ができないのかを、よく確認する必要があります。

メーカーで選ぶ

(株)AIHO、(株)エフ・エム・アイ エレクトラックス・ジャパン(株)、北沢産業(株)、(株)コメットカトウ、タニコー(株)、(株)中西製作所、ニチワ電気(株)、日本調理器(株)、(株)フジマック、ホシザキ電機(株)、(株)マルゼン、(株)ラショナル・ジャパン、ワシオ厨理工業(株)など、多くのメーカーがあります。これら全ての製品を確認するのは大変です。まずはテンポスのように各メーカーを横断して扱っている販売店で情報を得ることをお勧めします。

スチコン導入前に確認するべきこと

排水設備を確認する

導入予定の店舗の電圧やスペースの確認が重要なことはすでに述べましたが、他にも確認すべきことはあります。例えば排水環境。スチームを使うので排水がでます。蒸気は200度くらいになるので、その熱に耐えることのできる排水設備を整えることができるかどうかは重要です。

フードが付けられるか確認する

フードをつけるために、天井や壁の強度を確認する必要もあります。フードは単体で10万円ほどで、設置費をいれると20万円ほどかかってきます。ただ、これもフードを鉄で作るのか、ステンレスなのかで、そもそもフードを付けられるのかを現場で確認することが必要になりますので、厨房設備に詳しいテンポスに相談することをお勧めします。

スチコン導入にかかるコスト

小型で安価なものでも45万程度はかかります。6段や10段の中型スチコンになると200~300万程度。大型は300~400万。このほかに排水や電気の配線、フードの取り付けなどの工事費用、ホテルパンなどの購入費用がかかります。

また、水を大量に使うので、水に含まれるカルシウムやマグネシウム、あるいは鉄錆などがトラブルの原因になることもあり、浄・軟水器をつけることが多いのですが、その費用(初めからついている機器もありますが、その場合も1年に一度はカートリッジ交換が必要)も考える必要があります。それぞれの状況や条件によって、かなり差があり、一概には言えないので、お近くのテンポスでご相談ください。

故障かなと思ったら

まずは、電源を切って再起動させてみてください。パソコンやスマホと同じように、これで正常になる場合もあります。自分でできることはこれくらい。あとは専門家に任せてください。使用回数によってエラー表示が出るようになっているも機器もあります。カートリッジ交換や部品交換などが必要になるからです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

スチコンは決して安くはない厨房機器ですから、どんな料理を作りたいか、どんなオペレーションをしたいかを、事前にしっかり決めておくことが必要です。それにより、どんな商品が良いかが分かってきます。後悔しない厨房機器選びならテンポスにご相談ください。

スチコンについて教えてくれた人

テンポス名古屋千種店 長谷川宗平(2021.12.8)

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