フライパンは、どんな業態でも欠かすことのできない調理器具の一つですが、種類が多く、選ぶときに意外と迷いがちです。自分専用のマイフライパンを持っていたり、料理によって使い分けをしたり、こだわりを持って使っている料理人も多い調理器具です。今回はフライパンを取り上げます。確かな技術で作られた使いやすいと評判の調理器具を製造している北陸アルミニウム株式会社さんにお聞きしました。
フライパンにはさまざまな素材のものがあり、それぞれに長所・短所があります。同じ素材であっても、製造方法の違いや、底厚、内面コーティングの有無などでも特徴が変わります。今回は、素材、コーティング、製造方法、大きさと形の4つの視点からその違いを見て、正しい選び方を考えます。
素材で選ぶ
アルミニウム
軽くて扱いやすいのが特徴。鉄やステンレスに比べて、熱まわりが良いので、時間やエネルギーの節約になります。色味がわかりやすいのと火加減の調整がしやすいので、ソースなどを作るときに使う料理人も多いようです。たんぱく質を含む食材が表面に付着しやすいという短所もあり、卵や肉を使う料理は要注意。
ステンレス
高温での焼き物調理が得意。保温性が高く、いったん高温になると覚めにくいので、じっくり火を通す余熱調理に向いています。錆が出にくく、丈夫なのもステンレスのいいところ。傷にも強いので、金たわしを使っても大丈夫。
鉄
鉄製品の良さは、なんといっても1500度以上という融点の高さ(アルミニウムは660度)。空焚きにも耐えうるこの耐熱性は、油料理の出来栄えも決定的にします。熱伝道はアルミ・銅より遅いですが、いったん熱を貯め込むと簡単には逃しません。アルミと比較しても、熱が冷めるまでに1.5倍もの時間を要します。何度も料理を重ねることで徐々に油がなじんでいきます。最初によく熱することで熱が蓄えられ、熱ムラがなくなり、こびりつきを防ぎます。高温で一気に炒めることができるので、シャキシャキの野菜炒め、ステーキや中華料理に最適です。錆びやすいのが欠点ですが、こまめにお手入れをすれば一生もののフライパンになります。
銅
熱伝導性に優れているため、具材を入れたときの温度低下が少なく、常に高温を一定に保ちます。調理面への焦げ付きも少なく、錆が出にくいというメリットもあります。ただ、銅は酸に溶けやすい性質を持つので、酸味が強い料理や食材を扱う場合は要注意。
チタン
軽くて丈夫。鉄と比べても半分くらいの重さです。きわめて錆びにくく、強度も強い素材。金属臭がないのも長所の一つ。熱伝導性は低いのですが、鉄同様、一度温まると保温性は高いです。チタンは精製が難しく、高価な素材です。
コーティングで選ぶ
フッ素樹脂加工とテフロン
フッ素樹脂は、1938年にデュポン社がTFR(Tetra Fluoro Ethylen:四フッ化エチレン)の重合物を発見して以来、コーティング材料、成形品、フィルム等にデュポン社のテフロン™の商標名が広く用いられてきました。テフロン™加工のフライパンは1961年に発売されて以来、「焦げ付きにくい調理器具」の代名詞になるほど、キッチンに革命をもたらしました。現在「テフロン」及び「Teflon」は、デュポン社から分社したケマーズ者のフッ素樹脂についての商標です。
ハイパーグラニート加工
ミスト状の細かい粒子が密着・結合し、6層コーティングすることで耐食性・耐久性を向上。耐摩耗性・非粘着性にも優れ、こびりつきにくい状態が長持ちするのも特徴です。
マーブル加工
ストーン調をイメージした模様の層をプラスして耐久性を高めたフッ素樹脂コーティングの種類の一つです。層の数や色によって、多彩なバリエーションが存在します。
チタンコート加工
チタンコート加工は、金属のチタンをコーティングしているのではなく、樹脂(プラスチック系)コーティングの一種の呼び名。チタン素材の調理器具とは別物です。チタンコートに使用されている樹脂の種類は、シリコーン樹脂系やフッ素樹脂系など各メーカーによってさまざまなものがあり、その性能や取り扱い方法は、加工の内容によって異なってきます。
セラミック加工
一般的に陶磁器などと同じ系列の無機系材料を、調理器具内面にコーティングしたもので、フッ素樹脂(プラスチック)系コーティングとは異なる種類の表面加工です。セラミックは、硬さ、耐熱性に優れている特性がありますが、衝撃に弱いと言われています。ただし、セラミック材料をメインにしたものや、樹脂コーティングの中にセラミック系材料を添加したものなど、メーカーによってさまざまなこのがありますので、その性能や取り扱い方法は、加工の内容によって異なってきます。
製造方法で選ぶ
アルミプレス加工板製
アルミ円板をプレス絞り加工によって成型します。板厚が薄くて軽いため扱いやすいのが特徴です。
グラビティ鋳造(金型鋳造)
厚みが均一なプレス板製のフライパンと比較して、特厚底から側面にかけ徐々に肉厚を変化させることが可能なため、食材を全面的に均一過熱して熱ムラなく、おいしく、きれいに料理できるメリットがあります。アルミダイキャスト製品と比較して、ピンホール(小さな巣穴)が少ないため、フッ素樹脂コーティングの場合、そのピンホールからのガスの発生によるふくれ(ブリスター)が少ないので、コーティングが長持ちします。部分的なオーバーヒートを抑制し、フッ素樹脂加工の性能を長く維持します。
ダイキャスト鋳造
鋳造するのが容易で大量生産が可能なため、比較的安価です。ピンホールが多いため、フッ素樹脂コーティングなどにふくれ(ブリスター)が発生しやすく、コーティングが長持ちしないことがあります。
アルミスピニング加工
側面を薄く延ばして成型するスピニング加工は、同じ素材・形状のプレス加工品に比べて軽くなるため、扱いやすく、また型に押し付けて伸ばすことで強度が増し、変形に強くなります。
サイズ・形で選ぶ
フライパン18cm~22cm
ハンバーグなどの一般的な料理に
ディープパン(深型)
手軽に揚げ物を
いため鍋
野菜炒めなどの炒め物に
フライパン24cm~30cm
焼きそばなどの具だくさんの料理に
取材協力:北陸アルミニウム株式会社